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それで出世が遅れ(ry

専門用語を使った定型に近い文章を英語で書くための勉強方法

この記事はプログラマのための 英語・外国語 Advent Clendar 2017 21 日目の投稿です。

IT 系のエンジニアが英語を使うといった場合に考えられるシチュエーションの一つに、ドキュメントや、利用ガイド、あるいは readme.md のようなあまりカジュアルではない文章を英語で書くということがあると思います。

近年の Google 翻訳の進化により、日本語の文章をそのまま Google 翻訳に投げ込めばほとんど問題がない英文が出てくるのは確かなのですが、ほんのちょっとしたところで文脈を考慮しない(できない)ことに起因して、意図していない微妙なニュアンスの違いが出てくることがよくあります。

特に上述のような媒体では、情報発信者の意図を確認することのコストが会話やチャットのようなリアルタイムコミュニケーションよりも高くなることから、できれば一度文章を読んだときにより多くの人が同じように解釈できる文章を書くのが良いと考えています。

そこで、大量のサンプルを通してこのような文章を書く方法の一つとして、Microsoft の公式ウェブサイトにある多言語翻訳されたドキュメントを利用する方法を紹介したいと思います。

実際に Microsoft のウェブサイトを利用してまず文章を英訳してみる

例えば、次の一文を考えます。別にコマンドプロンプトじゃなくても CURL じゃなくても構いません。どこにでも使えそうで簡単な文章のように見えます。

コマンドプロンプトを開き、CURL をインストールしたディレクトリに移動し、次のコマンドを実行します。

これぐらいならサンプルなどなくても訳せそうでしょうか。早速 Microsoft の英語の文章を見てみます。

Open a command prompt, navigate to the directory where you installed CURL, and run the following command.

Apache Spark streaming: Process data from Azure Event Hubs with Spark cluster on HDInsight

実は例示した文章は、上の参照リンクの日本語版から抜粋してきた文章であって、単に対応する文章を同じページの英語版から同じように抜粋しただけです。

それはともかくとして、この短い文章の中にも初学者が使い方を間違えやすい冠詞 a や、関係副詞 where、そして and の使い方が含まれています。そして「コマンドを実行する」という言葉を英訳するときに、実行という言葉に引きずられてついつい execute を使いたくなるかもしれませんし間違いではないと思いますが、こういうときによく使うのは run でしょう。これは文脈に依存した動詞の選択と言ってもいいかもしれません。Google さんがいい見本を見せてくれます。

Open a command prompt, change to the directory where CURL was installed, and execute the following command. — Google 翻訳

また、where 句以下の文章についても Google 翻訳は決して間違えているわけではありません。ただ、実は上述のリンク先のページを最初から読んでいくと、該当する文章(手順)の前に CURL をインストールする手順があることから、文章の読み手が CURL をインストールしているであろうことが文脈上想定できます。そういった意味で、Microsoft が書くように

...the directory where you installed CURL,

としたほうが、より自然だと言えるのではないでしょうか。 では、これはどうでしょう。日本語だと何の変哲もない、よく見かける表現です。

日本語:

アプリケーションが実行されると、各コンポーネントの横に緑色のチェックボックスが表示されます。

Google 翻訳版:

When the application runs, a green check box appears next to each component.

別に間違えていません。では Microsoft はこれをどう訳すのでしょうか。

Microsoft 版:

Once the application is running, each component has a green checkbox next to it.

Google との違いは a green check box を主語にするのか each component を主語にするのかという点です。いかがでしょうか。何度も言いますが Google 翻訳が間違えているというつもりはありません。でももし、あー Microsoft の英文のほうが好きかなーという印象を受けたのであれば、それは比較する意味があったと言えるのではないでしょうか。

この方法の利点

  • 同じ意味の文章で日本語 - 英語間を行き来できる
  • サンプルの文章の品質がそれなりに高い
  • サンプルをとれる技術的領域が広い
  • 結構面白い

この方法の利点は、日本語だと全く気にも留めない、誰でも翻訳できそうな表現を英語で表現する際でも、そういう風に言うのかということを学べる点と、Microsoft のウェブサイトを指定して適当に検索しても Microsoft が扱う技術領域が広いおかげでだいたい何かサンプルが見つかる点にあります。

あと、上の例で挙げたようにどうしても日本語に引きずられて対応する英単語を考えがちな場合は、こうやってたくさんのサンプルに触れることで、日本語→英語ではなかなか出てこない単語を使って同じ表現ができるようになってきますし、英語のドキュメントを読んでいても「あ、これ進研ゼミで出たやつだ!」的に同じような文章によく出くわすようになると思います。

この方法の欠点

  • 面倒な上に(特にシングルモニターでは)効率が悪い
  • Google 翻訳の精度の向上に伴ってこの方法の優位性がなくなりつつある
  • それなりの英語を理解できないとあまり有用ではない
  • 文章のパターンや特有の単語の使い方を覚える仕組みはない

数年前ぐらいまでは Google 翻訳の精度がそれほどよくなくて、自動翻訳しましたねと一目見てわかるくらいでしたが、以前と比べて翻訳精度が高くなたこともあり、手軽さでは敵わなくなってきています。

また、日本語と英語を比較するのにはやはり同時に同じページを見られるほうが良いので、ラップトップやスマートフォン等でこの方法を使うのは割と面倒です。

加えて、語学学習用ウェブサービスやアプリケーションとは違って、覚えるための仕組みは組み込まれていないので、その観点からどうかしたいのであれば、別途方法を考える必要があります。

おわりに

今となっては単なる昔話になってしまいますが、私がこの手の文章をよく書いていた当時は Microsoft 製品を主に扱うインフラエンジニアだったこともあって、Microsoft のウェブサイトにはお世話になりました。今は日本語のページから英語のページに移動しなくてもポップアップ機能で対応する英文を表示することができるようになっていますが、当時は URL の言語設定の部分(ja-jp, en-us)だけを書き換えて両方のページをうろうろしすぎて、Google から bot 扱いされることもしばしばでした。

最近では Microsoft のウェブサイトだけではなく、MozillaAWSGCPApple 等のウェブサイトでも同様の方法で日英文を比較することができる場合がありますので、ご自身が携わる分野があれば確認してみてはいかがでしょうか。ただし、有志による翻訳や、機械翻訳によって情報量が異なったり、参考にならなかったりする場合がありますのでご注意ください。